原価管理の定義
原価管理とは何かについて従来より数多くの定義や議論があり、必ずも確定的なものになっていない。その背景として企業をとりまく環境の変化に伴って原価管理の概念が変化しており、画一的に定義しにくい面もある。ここでは次のように定義することにしよう。
原価管理とは経営活動における原価有効性を向上させるために、原価責任者が関連部門のスタッフの支援を得て、原価の目標を設定しその達成を図る一連の管理である。
このことについて若干の説明を加えておこう。
①原価管理の目的は原価有効性を向上させることである。
原価有効性(cost
effectiveness)というのは原価能率または原価効率を含んだより広い概念である。能率も効率も同じ意味であるが、機械や機器については効率ということが多く、その他の場合には能率ということが多い。
能率や効率はインプットに対するアウトプットの比で示されるから、原価能率または原価効率は消費する犠牲と出来高(生産高など)との比である。
一般的にインプットは消費する資源または原価であるから比較的測定しやすい。ところが、このインプットに見合うアウトプットは定量的に示されるものも多いがすべてのものが容易に定量化できるとは限らない。そこで、この容易に定量化できないものも何等かの方法によって定量化し、すべてのアウトプットの定量値とインプットの比を原価有効性という。
原価管理は単なる原価低減やコスト節約をするものではなく、目的にかなうように原価有効性を高めるものである。
②原価管理の責任者は原価責任者である。
原価責任者とは原価発生についての責任者であることもあれば、原価決定についての責任者(たとえば原価企画における開発設計のチームリーダーなど)であることもある。原価責任者は原価の発生、または決定について職務権限を有し、その行使に伴う責任を負うのである。原価責任者は職制上の管理者(全般管理者や部門管理者)だけとは限らない。プロジェクトチーム活動などでは、チームリーダーや担当者が原価責任者となることが多いが、彼は必ずしも管理者とは限らない。
③原価管理は原価の目標を設定してその達成を図ることである。
原価管理は原価の目標、あるいは標準を設定し、これをガイドラインとした達成活動である。厳しい努力をしたならば達成できそうな目標を設定し諸々の技法を駆使してこれを達成することである。この達成技法としてのIE(industrial
engineering)、QM(quality management)、VE(value
engineering)、OR(operations
research)や統計技法・心理学的アプローチなどが活用される。原価の目標を指針としないで行われた原価低減や原価維持は原価管理とはいわない。
④原価管理は関連部門のスタッフの支援を受けて行われる。
関連部門としては第1義的には原価管理推進の事務局であるが、これ以外の部門(たとえば、開発・設計、生産技術、製造、購買、物流、経理、品質保証などの部門)のスタッフの支援を受けて実施するのが一般的である。支援には原価の目標設定における支援もあれば原価の目標達成における支援もあるし、さらには原価低減技法を教えてもらう支援もある。