原価管理の体系
原価管理という用語がわが国で初めて用いられたのは1951(昭和26)年で、cost control を原価管理と訳したことに始まる。それまでは戦前から cost control を原価統制と訳していた。cost control を原価管理と訳した後にアメリカで cost management という用語が用いられるようになり、その適切な日本語訳が見当らず、したがって止むを得ずこれも原価管理と訳すに及んで広義、狭義の原価管理概念が生れてしまったのである。
さらにその後、昭和30年代の終りになって原価企画が提唱され、これを原価管理概念に含むようになったので、原価管理概念はより拡大した。それを示せば次のようである。
原価維持は主要な経営構造、開発設計された製品、製造場所、製造規模など、基本的な業務遂行方法・手続きを前提として設定された原価の標準や目標をいかにして達成するかに管理活動の焦点を当てるものである。
原価改善は原則として主要な経営構造を前提とするが、ときにはこの一部分や業務遂行方法・手続きなどを合理的に改善して、原価の標準や目標を引き下げる活動をいう。
このようにして引き下げられた原価の標準や目標は原価維持活動に引き継がれるのである。
原価企画とは主要な経営構造の変更など(新製品の開発設計など)の活動を管理対象とし、主として「原価の決定」活動を合目的的に管理するものである。原価維持と原価改善は主として設計後の活動であり、「原価の発生」活動を管理対象としている。
(注)主要な経営構造には企業の販売対象となるもの(製品やサービス)、経営立地(営業拠点、工場など)、経営規模、資本構造(財務体質、資金調達力など)、技術力(開発力、製造力、販売力など)、管理力・人材活用力、企業文化などが含まれる。